2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

超越を生きる

木村敏「差異としての超越」,横山博編『心理療法と超越性 神話的時間と宗教性をめぐって』≪心の危機と臨床の知 10≫,甲南大学人間科学研究所叢書,2008年,所収 シリーズ≪心の危機と臨床の知≫は,文部科学省の学術フロンティア推進事業に採択された共同研究…

ナチ神話

フィリップ・ラクー=ラバルト,ジャン=リュック・ナンシー『ナチ神話』(守中高明訳)松籟社,2002年 前回紹介したケネス・バークの神話論(3月21日)は,神話に関する議論として珍しい種類のものではないかと思う。学問の営みは,神話がいかに危険なも…

イデオロギーと神話 2

ガスフィールド編,ケネス・バーグ『象徴と社会』森常治訳,法政大学出版局,1994年 前回(3月19日)は,本書に収められたケネス・バークの1947年の論文「イデオロギーと神話」を引用しながら,イデオロギー闘争を克服しようとする知識社会学は,人々から…

イデオロギーと神話 1

ガスフィールド編,ケネス・バーグ『象徴と社会』森常治訳,法政大学出版局,1994年 3月3日に取り上げたケネス・バーグから。 本書は,社会学者J. R. ガスフィールド(Joseph R. Gusfield)の手によって編纂されたケネス・バーグ読本ともいうべき書物。原書…

社会の医者

竹内好「インテリ論」1951年,「教養主義について」1949年,『竹内好全集第6巻』筑摩書房,1980年 加藤周一,ノーマ・フィールド,徐京植『教養の再生のために 危機の時代の想像力』影書房,2005年 携わっていた長期の仕事に,ようやく先週,区切りをつける…

終末のシンボル的意義

武田泰淳『滅亡について 他三十篇』川西政明編,岩波文庫,1992年 大学は今,春休み。 理系の世界ではこの時期,学会が多いと聞いたことがある。文系の私の関わっている学会でも3月末に支部会が開かれる。そうしたものに関わっている大学の教員(当然だが,…

シンボルと宗教

ケネス・バーク『文学形式の哲学 象徴的行動の研究』(森常治訳)国文社,1974年(原著,1941年) ケネス・バークは1897年アメリカ,ペンシルバニア州ピッツバーグ生まれの文学批評家。哲学,言語学,社会学などの学問領域をこえた独創的な批評体系の構築を…

脳と宗教

養老孟司『カミとヒトの解剖学』ちくま学芸文庫,2002年,(法蔵館,1992年) 専門の異なる人が,自分の関心ある研究テーマについて述べているのを読むのは,たいへん興味深い。しかも,それがまったく専門の異なる著名人だと,なおありがたい。自分の考えて…