2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

排除する心

滝川一廣『家庭のなかの子ども 学校のなかの子ども』岩波書店,1994年 昨日に続いて,本書の議論を紹介する。 昨日は,第一部の「家庭のなかの子ども」を話題にしたが,今日は第二部「学校のなかの子ども」から。著者は,村瀬学(7月21日で引用)の論考(…

心というもの

滝川一廣『家庭のなかの子ども 学校のなかの子ども』岩波書店,1994年 やや難解な書物が続いたので,比較的わかりやすいものを取り上げてみたい。滝川一廣氏は,1947年生まれの精神科医。本書刊行時には,名古屋市児童福祉センター「くすのき学園」園長を勤…

中心と周縁

山口昌男『文化と両義性』岩波書店,1975年 昨日に引き続き,本書から引用する。人文社会科学では,ひところよく言及された人が,別にその理論が明確に否定されたりすることもなしに,ある時期からあまり言及も注目もされなくなるようなことがある。 本書の…

混沌と秩序

山口昌男『文化と両義性』岩波書店,1975年 この世界を生きるということは,一方では,混沌を秩序化するということであり,他方では,既成の秩序を超え出るということなのだと思う。 秩序化はさまざまな水準でおこなわれ,そこからの超出もさまざまな場面で…

「権力核」の不在

飯尾潤『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』中公新書,2007年 本書は,現下の日本政治が直面する問題の焦点を理解するための必読書である,と思う。まずは,日本政治に対する著者の問題意識を述べた箇所をざっと取り上げてみよう。まずは,明治憲…

精神病理学における<歴史不在> その3

渡辺哲夫『二〇世紀精神病理学史 病者の光学で見る二〇世紀思想史の一局面』ちくま学芸文庫,2005年 さらに本書から,見逃しえぬ思想史上の事例を二つ,引いておきたい。 思想や哲学の専門家などよりも,それ以外の専門をしっかりと身に付けた人の方が,しっ…

精神病理学における<歴史不在> その2

渡辺哲夫『二〇世紀精神病理学史 病者の光学で見る二〇世紀思想史の一局面』ちくま学芸文庫,2005年 本書には,見逃すことのできない史実の記述が散らばっている。いくつか紹介しておきたい。 「[ドイツの精神医学者で,現代精神医学の基礎を造りあげた]エ…

精神病理学における<歴史不在>

渡辺哲夫『二〇世紀精神病理学史 病者の光学で見る二〇世紀思想史の一局面』ちくま学芸文庫,2005年 個人的なことになるが,博士論文でディルタイという哲学者・歴史家を論じた。この思想家を研究することは,たやすい仕事ではなく,いまでも出版された博士…

べてるの家

向谷地生良『「べてるの家」から吹く風』いのちのことば社,2006年 「べてるの家」に関する著作は何冊かある。 その中の一冊,横川和夫『降りていく生き方』太郎次郎社(2003年)から,べてるの家についてざっと紹介すると, 「べてるの家は,浦河赤十字病院…

自閉症という世界

村瀬学『自閉症─これまでの見解に異議あり!』ちくま新書,2006年 東田直樹『この地球にすんでいる僕の仲間たちへ─12歳の僕が知っている自閉の世界』エスコアール,2005年 Aと非Aとを,対立的なものとしてではなく,連続的なものとして見直してみると,…