anthropology

「目あきのおごり」

ヴァルター・ベンヤミン「ボードレールにおけるいくつかのモティーフについて」『ベンヤミン・コレクションI 近代の意味』浅井健二郎編訳,久保哲司訳,ちくま学芸文庫,1995年 山口昌男「神話的感受性の帰来」『仕掛けとしての文化』講談社学術文庫,1988年…

時間の比較社会学

真木悠介『時間の比較社会学』岩波現代文庫,2003年(原著,1981年) 少し間があいてしまったが,前回(4月13日)は,生命論の観点から,人間の「思想」が未来志向的な生き方に関わる側面にふれた。 ただし,誤解のないようにつけ加えておくが,そこでは…

内部の分裂から外部の分裂へ

鶴見和子『南方熊楠(みなかたくまぐす)』講談社学術文庫,1981年[原著,1978年] 先週(1月14,15日)に引き続き,鶴見和子の著作より。本書は,昭和54年に毎日出版文化賞を受賞した作品である。 「南方は,その生き方においても,関心の方向にお…

ベイトソン『精神の生態学』より(3)

グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学 改訂第2版』(佐藤良明訳)新思索社,2000年 ベイトソンの理論において,サイバネティックスと並んでパラドックスのコミュニケーションを支える論理階型論について見ていきたい。 論理階型論は,そもそも数学者ラッセ…

ベイトソン『精神の生態学』より(2)

グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学 改訂第2版』(佐藤良明訳)新思索社,2000年 昨日,たまたまアンジェラ・アキの「手紙」という歌を聴いた。そのなかに「人生のすべてに意味がある」という歌詞があった。 こうした歌詞を,「説教臭い」と感じる人もい…

ベイトソン『精神の生態学』より(1)

グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学 改訂第2版』(佐藤良明訳)新思索社,2000年 9月30日,10月1日に取り上げた教育学者・矢野智司氏の考え方や方法の背後には,グレゴリー・ベイトソンがいる。 ベイトソンとは誰か。手元にある『人間学命題集』(…

回帰する歴史

山口昌男『文化の詩学 I』岩波現代文庫,2002年(岩波書店,1983年) 歴史に対する反省は,現代思想における一つの焦点であると思う。いろんな角度から論じることができるが,昨日(8月30日)に引き続いて,本書のなかから,「I オクタビオ・パスと歴史の…

歴史と性格

山口昌男『文化の詩学 I』岩波現代文庫,2002年(岩波書店,1983年) 山口昌男氏の文章については,すでに7月27,28日に『文化と両義性』をとりあげた。 文化人類学の領域で山口氏が現在どのように評価されているのか,詳しくは知らない。私が学生の頃…

中心と周縁

山口昌男『文化と両義性』岩波書店,1975年 昨日に引き続き,本書から引用する。人文社会科学では,ひところよく言及された人が,別にその理論が明確に否定されたりすることもなしに,ある時期からあまり言及も注目もされなくなるようなことがある。 本書の…

混沌と秩序

山口昌男『文化と両義性』岩波書店,1975年 この世界を生きるということは,一方では,混沌を秩序化するということであり,他方では,既成の秩序を超え出るということなのだと思う。 秩序化はさまざまな水準でおこなわれ,そこからの超出もさまざまな場面で…