2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

象徴としての神話と言葉

カッシーラー『人間』宮城音彌訳,岩波書店,1953年 ドイツの新カント派系の哲学者として知られるエルンスト・カッシーラーについて,小さな文章を書く機会があったので,その関連で,『人間』を紹介したい。この本については,数ヶ月前(8月17日,18日…

都会と精神,および発達障害

ジンメル「大都会と精神生活」,『ジンメル・エセー集』(川村二郎編訳)平凡社ライブラリー,1999年 一昨日に引き続き,ジンメルの1913年(第一次世界大戦の直前!)のエセーを紹介する。 ところで,ジンメルという社会学者,十分に説明していないことに気…

廃墟にみえるもの

ジンメル「廃墟」,『ジンメル・エセー集』(川村二郎編訳)平凡社ライブラリー,1999年 拘束や締切のある仕事がつづき,なかなか日記を更新できませんでした。 師走の12月は,昔も今も,たしかに走るような忙しさ。年明けの2ヶ月もそれはかわらず,3月…

反西洋思想(2)

I・ブルマ&A・マルガリート『反西洋思想』(堀田江里訳)新潮新書,2006年 11月12日に引き続いて,本書から。 前回は,日本人にも比較的わかりやすい「反西洋思想」の例を取り上げた。 今日は,わかりにくいものを取り上げる。第4章の「神の怒り」からで…

反西洋思想(1)

I・ブルマ&A・マルガリート『反西洋思想』(堀田江里訳)新潮新書,2006年 本書のカバーには次のような紹介がある。「ナチズム,毛沢東思想,「近代の超克」,イスラム原理主義・・・。「西洋」を敵視して戦いを促す思想は,昔から絶えることがない。西洋…

病める神話・生ける神話(2)

武野俊哉『嘘を生きる人,妄想を生きる人 個人神話の創造と病』新曜社,2005年 上記の本の紹介を続けたい。 残されていたのは,個人神話の虚言の有する創造性。つまり,c「虚構性や虚偽性のなかに秘められている創造性」を生み出すc’「生きた神話」である。 …

病める神話・生ける神話(1)

武野俊哉『嘘を生きる人,妄想を生きる人 個人神話の創造と病』新曜社,2005年 著者は,1953年生まれの精神医療の臨床家である。東京医科歯科大学医学部卒業後,病院の院長を歴任した後,スイスのユング研究所に留学して,ユング派分析家資格を取得し,現在…

ユダとは誰か

荒井献『ユダとは誰か 原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダ』岩波書店,2007年 一昨日,太宰治の『駈込み訴え』を取り上げて「「裏切り者」ユダの独白形式をとった『駈込み訴え』(ちくま文庫・太宰治全集では3巻に所収)は,最近のユダ研究によれ…

ユダヤ人・イエスとキリスト・イエス

ヤロスラフ・ペリカン『イエス像の二千年』(小田垣雅也訳)講談社学術文庫,1998年(原本は『文化史の中のイエス』新地書房,1991年。原著は1985年) 1990年の日付のある訳者あとがきによると,著者ペリカンは,1923年生まれで,イェール大学歴史学部の Ste…