2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

人生のゲーム

高田康成『キケロ ヨーロッパの知的伝統』岩波新書,1999年 この日記のなかで,しばしば「遊び」を話題にしてきた。 実用的なもの・実学的なものだけに目が向きがちな世の風潮への反発なのだと思う。 注意して欲しいことだが,実用的・実学的なものと「遊び…

ゲームの仕事

長嶋有『パラレル』文春文庫,2007年 先週後半から体調を崩し,高熱と痛みをベッドで耐えた。 39度まで熱を出すと,ふだんならきつく感じる37度代の熱でも,楽に感じる。しかし,そういうときに動いて病状を悪化させることもあるというので,ずっと安静…

アレントと政治

ハンナ・アーレント(ウルズラ・ルッツ編)『政治とは何か』(佐藤和夫訳)岩波書店,2004年 10月8日の日記に,近いうちにハンナ・アレント(アーレントとも表記)のことを取り上げたいといっておきながら,取り上げることができないできたが,一昨日の古…

民主主義と教養

M. I. フィンリー『民主主義 古代と現代』(柴田平三郎訳)講談社学術文庫,2007年 フィンリーは,は1912年にニューヨークに生まれ,コロンビア大学で博士号を取得した古代ギリシア史家。1954年にイギリスに渡り,のち帰化する。イギリスへの移住は,マッカ…

教養と社会化

作田啓一「社会化と教養小説」,作田啓一『仮構の感動 人間学の探究』筑摩書房,1990年 作田啓一氏は,1922年に生まれ,京都大学文学部哲学科(社会学専攻)を経て,本書刊行時は甲南女子大学教授。主著の『価値の社会学』(1972年)は,岩波モダンクラ…

ベイトソン『精神の生態学』より(3)

グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学 改訂第2版』(佐藤良明訳)新思索社,2000年 ベイトソンの理論において,サイバネティックスと並んでパラドックスのコミュニケーションを支える論理階型論について見ていきたい。 論理階型論は,そもそも数学者ラッセ…

ベイトソン『精神の生態学』より(2)

グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学 改訂第2版』(佐藤良明訳)新思索社,2000年 昨日,たまたまアンジェラ・アキの「手紙」という歌を聴いた。そのなかに「人生のすべてに意味がある」という歌詞があった。 こうした歌詞を,「説教臭い」と感じる人もい…

ベイトソン『精神の生態学』より(1)

グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学 改訂第2版』(佐藤良明訳)新思索社,2000年 9月30日,10月1日に取り上げた教育学者・矢野智司氏の考え方や方法の背後には,グレゴリー・ベイトソンがいる。 ベイトソンとは誰か。手元にある『人間学命題集』(…

思考と文体

斎藤美奈子『誤読日記』朝日新聞社,2005年 斎藤美奈子氏の文体は,いろいろと考えさせられる。 例えば,『モダンガール論』(文春文庫)の文体は,歴史学の標準的な文体とは大いに異なるけれども,斎藤さん(冒頭,斎藤美奈子氏と書いたのだが,斎藤氏とい…

国際政治という場

中西寛『国際政治とは何か 地球社会における人間と秩序』中公新書,2003年 日本人の性格はしばしば「島国根性」とよばれるが,それは自分の生きる日本列島という場が同時にまた世界(いわゆる一般的な国々の集まりとしての世界。後で引用するアレントの「世…

経済と人間(2)

岩井克人『資本主義を語る』ちくま学芸文庫,1997年 一昨日に引き続き,岩井克人氏の一般向けの書物から。 人間は,いかに自分が経済に縁遠いと考えても,経済と無関係に生きることはできない。しかし,だからといって,すべての人間的世界を,経済をモデル…

貨幣と人間(1)

岩井克人・三浦雅士(聞き手)『資本主義から市民主義へ』新書館,2006年 いままで,経済に関する本は取り上げてこなかった。 苦手な分野で,何を取り上げるべきか思いつかなかったからだけれども,しかし,前回(10月2日)の末尾でもふれたように,この…

子どもの生きる場(2)

矢野智司「子どもの遊び体験における想像的瞬間─体験を反復する創造性のコミュニケーション論」,佐藤学・今井康雄編『子どもたちの想像力を育む アート教育の思想と実践』東京大学出版会,2003年 一昨日に引き続き,矢野智司氏の論文の紹介を続けたい。 非…