critique

レディ・ジョーカー

高村薫『レディ・ジョーカー』新潮文庫、2010年(毎日新聞社、1997年、の全面改訂版) 連休、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。 私は、一つだけイベントがありましたが、それ以外はどこにも出かけずに、たんたんと過ごしています。 よい休暇をお過ごしにな…

ガリヴァー旅行記を読む

高坂正堯『近代文明への反逆─社会・宗教・政治学の教科書「ガリヴァー旅行記」を読む』PHP研究所、1983年 著者高坂正堯(こうさか・まさたか、1934-1996)は、現実主義の立場から政治についてたびたび発言し、注目を集めた国際政治学者である。京都大学法…

ファンタジーと言葉

アーシュラ・K.ル=グウィン『ファンタジーと言葉』青木由紀子訳、岩波書店、2006年 入学式やオリエンテーションを終えて、いよいよ授業がはじまる時期となりました。 学校というのは、夢によって成り立つ空間だと思います。 個々の夢は社会的な幻想の根か…

哲学的日本を建設すべし

石橋湛山「哲学的日本を建設すべし」(明治四五年六月号『東洋時論』「社論」)、松尾尊兌編『石橋湛山評論集』岩波文庫、1984年 卒業・修了シーズンです。 卒業・修了される皆さんの前途をお祈り申し上げます。 さて、前回(3月22日)の日記の末尾に、「…

21世紀の教養

芹沢一也・荻上チキ編・飯田泰之他『日本を変える知─「21世紀の教養」を身に着ける』2009年、光文社 芹沢一也・荻上チキ編・飯田泰之他『経済成長って何で必要なんだろう?』光文社、2009年 経済(学)と思想とは、必ずしも相性が良くない、と感じる。 も…

イデオロギーと神話 2

ガスフィールド編,ケネス・バーグ『象徴と社会』森常治訳,法政大学出版局,1994年 前回(3月19日)は,本書に収められたケネス・バークの1947年の論文「イデオロギーと神話」を引用しながら,イデオロギー闘争を克服しようとする知識社会学は,人々から…

イデオロギーと神話 1

ガスフィールド編,ケネス・バーグ『象徴と社会』森常治訳,法政大学出版局,1994年 3月3日に取り上げたケネス・バーグから。 本書は,社会学者J. R. ガスフィールド(Joseph R. Gusfield)の手によって編纂されたケネス・バーグ読本ともいうべき書物。原書…

物語りはじめるために

古井由吉『始まりの言葉』岩波書店,2007年 昨日(9月2日)の記述は,権力者に対する記述としてはいかにも甘いものだったかもしれないと,反省している。 言いたいことにかわりはないのだが,話題にした人物は,希望をまったく失ってしまったというわけで…

流行と不易

中西進『日本語の力』集英社文庫,2006年 昨日(8月20日)の言語の問題を,具体的に日本語に即して考えてみるとどうなるのか,と思って手に取った,肩肘張らずに気楽に読めるエッセーの中に,なかなか気になる言葉が出てきたので,紹介したい。 著者は,…

歴史の忘れ水

古井由吉『野川』講談社文庫,2007年(2004年) 古井由吉は,1937年生まれの,現代日本を代表する文学者である。東京大学文学部独文科修士課程を修了し,大学の教職を経て,71年に『杳子』で芥川賞を受賞,教職を辞して,作家となった。 かれの小説を特徴づけ…

スープ一杯のつながり

五味太郎・小野明『絵本をよんでみる』平凡社ライブラリー,1999年 絵本作家の五味太郎氏が,絵本・児童書のプロ・小野明氏と対談形式で絵本をよんでいく。取り上げられるのは,ディック・ブルーナ『うさこちゃんとうみ』,バイロン・バートン『よわむしハリ…